ゴカイかウミケムシか。駆除?益虫?食べる生き物は?
当記事は海水水槽で出会う『ゴカイ』と『ウミケムシ』の見分け方や駆除方法・ウミケムシを食べる生き物などについてご紹介しています。淡水の話ではありません。
海水水槽をやっていれば「大丈夫?駆除したほうが良い?」と心配になる生き物に出会う事はよくあります。そのうちの一つが『ウミケムシ』
「棘に毒がある」「魚が刺される」と言われるウミケムシですが、種類によってはゴカイ同様の益虫でもあり、果たして駆除して良いのかそっとしておいたほうが良いのか…悩むところ。
今回は『海水水槽から出てきたゴカイのようなウミケムシのような生き物』について、駆除するべきか否か、食べる生き物はいるのか、最終的な駆除方法など…についてゆるーくご紹介致します。
ゴカイとウミケムシの違い
まず名前からして「海毛虫」と気持ち悪いうえに見た目もヤバいウミケムシ。日本近海にも生息しておりダイバーや釣り人にとっては珍しい存在ではなく「刺される」「毒がある」なども本当の話です。いたずらに触ってはいけませんし、飼育なんてとんでもない。
しかしそれは自然界で出会う『ヤバいサイズのウミケムシ』の話。
ちょっと話が逸れますが、マリンアクアリストにはお馴染みのライブロックには様々な生き物が生息しており、その中にはゴカイ類も含まれています。デトリタス食と呼ばれる食性を持ち、ライブロックの穴や底砂内に溜まる堆積物を食べてくれる有益な生き物です。
ゴカイも見た目はグロテスクで駆除したくなりますが、水槽内の生物層を厚くし、水槽環境を維持するためには必要不可欠な生き物。駆除なんてとんでもない。
しかしウミケムシもゴカイの仲間なのです。しかも厄介なことに「こっちはゴカイ、こっちはウミケムシ」という明確な線引きがなく、どちらなのか曖昧な位置にいるゴカイ・ウミケムシも存在しているそうな。
釣り人が公開している写真のようなヤバいウミケムシは別として、水槽内で発見するウミケムシの多くはゴカイと同様の働きをしてくれる益虫でもあるのです。
水槽でよく見るウミケムシ
ちょっとだけ閲覧注意な写真が来ますよ・・・
そういう系が大丈夫な方と、ダイエットしたい方以外は薄目で見て下さい。
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こいつは海水水槽ではほぼお馴染み。よく見かける種類です。
ビギナーが初めて発見して『水槽にウミケムシがいた!!』と騒ぐ原因になるのもぼぼコイツ。厳密にはわかりませんが、おそらく『ハナオレウミケムシ』の一種ではないかと。
もしこの種類ではなく、もっと大きくてヤバいウミケムシを水槽から発見したならば即駆除して下さい。しかし、水槽内で発見したのがこの種類であれば、メンタル的な理由(キモい・イヤだ)を除けば慌てて駆除する必要はありません。
コイツは身体に棘(毛)が生えている事からも「ウミケムシの仲間」ではあるのですが、かなりゴカイ寄りのウミケムシ。デトリタス(堆積物)の処理をし、底砂を撹拌し、水槽環境に益をもたらしてくれる生き物になります。
この種類のウミケムシで『魚が刺されて体調を崩した。ウミケムシを駆除したら体調が回復した』という体験談を語っている方もいますが、こいつは積極的に魚を刺しにいくような事はありませんし、泳いでいる最中に触れた程度で魚が弱る事もありません。
「単なる思い込み」で片付けては失礼ですが、魚の様子がおかしくなったならばウミケムシ以外の原因を考えたほうが良いのでは…と思います。
害はないの?
益虫なので魚に害はない…とはいいましたが、アクアリウムの楽しみ方は人それぞれですので場合によってはデメリットになる要素も。
- とにかくキモい
- ライブロックを穴だらけにする
- 弱った貝類(他の生き物も)を食べる
「キモい」に関しては言わずもがな。人として正常な感覚です。こればかりはどうしようもありませんな。
この種類のウミケムシは底砂にも潜りますが、ライブロックにも小さな穴を開けるので…長~い目で見れば穴ポコは増えます。
最後の「食べる」に関してなのですが、元気に生活している貝や魚を捕食する事はありません。ただし、弱って死期が近い生き物に対してはまだ息があるうちから群がって食べる事はあります。
(弱って泳ぎまわれない魚や、ひっくり返って起き上がれないまま時間が経過したシッタカガイ、環境が悪く活着できなかったシャコガイなど)
「貝が食われた!」「魚が食われていた!」という場合、ウミケムシ以外の理由ですでに弱っていた可能性が高いので勘違いしないように。
でも駆除したい!駆除方法は?
目についたものを片っ端からピンセットで取り除けば一時的に数が減ったように見えますが、ライブロックや底砂に小さなものが隠れているため、環境が同じであればいずれ元通りに増えます。
異常に増殖しない限り、ある程度の数は気にせず共存するのが望ましいのですが…「俺は全世界からウミケムシを駆逐してやる!!」と鼻息荒い少年のため、駆逐方法をいくつかご紹介しておきます。
キュアリングで駆除
ライブロックを適当な水槽(バケツなどでも良し)に入れ、エアレーションをかけて行う『キュアリング』
ただ入れておくだけではウミケムシ駆除はできませんので、海水用の駆除剤を用います。
注)2020年8月現在、Amazonでは取り扱いが無くなっていました。
ただし駆除剤は他の有益な生き物も殺してしまうので、使用は自己責任で。
もっと環境に優しく駆除したい…というのであれば、キュアリング水槽にむき海老などを入れておびき出す事も可能です。ライブロックをスタンドなどで上げておき、夜に入れておきましょう。…しかしエサ方式はある程度大きなウミケムシしか寄ってこないので完全駆除は難しいです。
デスロック化で完全駆除
エサや薬剤駆除など生ぬるい!一族郎党完全に根絶やしにしてくれるわっ!!…という武士(もののふ)気質のあなたは、ライブロックをデスロック化することで駆除という野蛮な手段もあります。
「ライブロックを鍋で煮てから数日ほど天日干し」を2~3回繰り返します。しっかりと煮て干してをやらないとアンモニアが溜まった状態になるのでご注意を。
100%完全に駆除する事が可能ですが、バクテリア含むライブロックの全生命が失われます。あとに残るのは単なる飾りサンゴですな。
最終手段・水槽リセット
デスロック化することで「ライブロックのウミケムシ」は完全に駆除する事ができますが、底砂を入れていた場合ウミケムシはすでに底砂に移動しています。そうなると完全駆除はもはや困難。
武士気質を越えて虐殺独裁者気質のあなたがとるべき最終手段は…そう、『水槽リセット』しかありません。
ライブロックを捨て、底砂も捨て、大事な魚だけを新たに立ち上げた水槽へと移動させ、その地で新しい生活を営んでもらいます。
これまでに築き上げてきたバクテリアも魚の安定もイチからやり直し、それどころかマイナススタートとなりますし、新たな水槽にライブロックを入れればまたいつの日か同じウミケムシに出会います。
海水水槽やってりゃ避けて通れない小型ウミケムシのために水槽リセットなど、まさに愚の骨頂だと思いますが…そこは人それぞれですので。
ウミケムシを食べる生き物
なおウミケムシを食べる(と言われている)生き物も存在します。
代表的なのは『アロークラブ(アローヘッドクラブ)』
ただしウミケムシだけを専門にパクパクと食べていくわけではなく、人工餌がもらえる事を覚えればそっちを食べるようになってしまいウミケムシはほったらかしの場合も。
同じく肉食性甲殻類の『オトヒメエビ』もウミケムシやゴカイを食べます。
これは細い穴に手をつっこみ、ウミケムシを引きずり出して食べている様子。少しづつちぎって食べるところが実にキショい(汗)
オトヒメエビも「エサがもらえない時にたまに食べている」といった程度です。
ベラの一種も食べてくれるそうですが、駆除という目的で考えれば生物兵器はあまり現実的ではありません。這い回る数が多少減ったかな?といった程度の効果ならば期待できますけど。
繁殖させない知恵
そもそもこの種類のウミケムシが爆発的に繁殖しているというのならば、それは水槽環境に問題がある証拠。『水槽内に余計な堆積物が多い』ということになります。
『エサを入れすぎている』
『水槽内の水の循環が悪い』
『デトリタスが溜まりやすい』
…などが原因として考えられますので、そういった部分を改善することで繁殖を抑制することはできます。すでに増えてしまったウミケムシを徐々に数を減らす事も十分に可能です。
- ムシロガイ系を入れて残り餌を食べてもらう
- ベントス系ハゼなど「底砂ごと微生物をガブっと食べる魚」を入れる
- マガキガイを入れて底砂表面の撹拌
…などなど。個人的にはムシロガイ系を入れるのが「残り餌を処理。潜る事で底砂にデトリタスが溜まることを緩和」とW効果でオススメです。
どの程度をもって「増えすぎている」と感じるかは個人差がありますが、「水槽を見るたびに1~2匹見かける」といった程度ならば許容範囲だと私は思います。
ゴカイ?ウミケムシ?まとめ
海水水槽から現れたピロピロ虫、ゴカイか?ウミケムシか?駆除は?をざっくりフローでまとめると…
- ゴカイか?ウミケムシか?
- 水槽でよく見るコイツは『ウミケムシ』
ただしゴカイ同様の益虫で、他の生物にはほぼ無害。
大量繁殖して困っているなどでなければそのままにしておくほうが良い。
- 増えすぎないためには?
- 水槽内に残りエサを溜めない。
底砂やライブロックにデトリタスを溜めすぎない。
対策:
・ムシロガイで残りエサ対策と底砂撹拌
・マガキガイで底砂撹拌
・ベントスハゼで底砂をクリーンに
・捕食生物を入れて食わせる(効果は薄い)
・水流を改善して汚れ溜まりを防ぐ
- 対策じゃ無理。駆除方法は?
- 『キュアリング』
サンゴ用などの駆除剤を用いてキュアリング。できればライブロックを上げるなどして、落ちたウミケムシがライブロックに戻れないようにしたほうが良い。
『デスロック化』
煮て干してを繰り返してライブロックごと根絶やしに。
ただしライブロックは死ぬ。底砂を入れていた場合はそちらにも生息しているので、いずれ再びライブロックに戻ってくる。
『水槽リセット』
禁断の最終手段。完全駆除できるがオススメしない。
となります。
海水水槽を楽しんでいれば、謎の生き物に出会うのはもはや必然。その中には人間の感覚では受け入れ難いルックスの生き物も多くいます。
このウミケムシもあまり気持ちの良いものではありませんが、前述したとおり大量繁殖しなければ大騒ぎするような害虫ではありません。
そもそもコイツが大量繁殖してしまうような環境は飼育水槽として良好とは言えませんので、根本から見直すことで自然と気にならない程度に減ってくれますよ。