水槽の『水換え不要』に注意!「水換え頻度が減る=楽」ではない…という話

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なぜかあちこちに存在する『水槽の水換え不要(もしくは頻度が減る)』を目指そうとするアクアリストたち。「これを使えば水換え不要!」「水換え回数が減る!」といった製品も多く存在しますし、『水換え不要の水槽を作ってみた』といった動画も多数アップされています。

しかし水換え作業を無くす(または減らす)という事と、水槽環境の良し悪しは全く別モノ。それなのに『良い水槽=水換えの必要がない水槽』と勘違いしているアクアリストが多い、多すぎる。

今回は『水換え不要(もしくは頻度が減る)の意味をしっかり理解しよう』をテーマに、勘違いしている方への注意喚起を含めた内容になります。

なお『水換え不要論信者』は非常に面倒くさいタイプの人間が多いのため、あくまでも一個人の意見としておきます。でないとまたアホみたいなコメントや問い合わせがきますし…。

水換え不要論者

人間というのは自分の立場によって主張が変わるもの。立場が変われば言っている事が180度変わってしまう人は多くいます。

喫煙していた頃はタバコの値上がりに文句を言っていたクセに、禁煙して無関係になれば今度は「タバコ税を上げればいい」と言い放つ。なんとも愚かな思考ですが、なぜかそんなもんです。

アクアリウムにしても「水換え作業は面倒臭い。お金がもったいない。やらなくて済めばそれに越したことはない」と思っている人間ほど「水換えのいらない水槽=良い水槽」という主張をしたがりますし、そういった製品やサービスにも飛びつきやすい。

しかし実のところ、

「水換え不要」
「管理が楽」
「良い水槽」

これらはイコールではなく、それぞれ全く別モノ。

水換え不要の水槽とは、決して手間がかからない水槽の事でありません。

そして

手間がかからない水槽が、理想的な水槽ではありません。

後ほど詳しく解説しますが、これは最初に断言しておきます。

淡水と海水は全く違う

さてさて、ここで具体的にいくつか製品を紹介しても良いのですが、それはさすがにアレですので…某製品・某サービスという事で。

『なぜ水換え不要なのか』の理由をよく考えてみましょう。

とある水換え不要器具

○○○の働きにより、水を綺麗な状態に保つので水換え頻度が激減!水槽管理が手間いらずに!

これが一番よく聞くタイプ。生き物の排泄物であるアンモニアを段階的に分解し、最終的に無害な成分に変えてしまうので水換えが不要、すなわち水槽管理が楽になる…という謳い文句ですな。

器具だけに留まらず、水換え不要の水槽システムをトータルプロデュースする企業なども基本的には似たようなもの。

たしかにこれら製品や企業の言っていることが全て本当であれば、水換え頻度は激減、場合によっては水換え不要も嘘ではないでしょう。しかしそれで『手間いらず』となるのは、

『淡水』ならばの話

海水水槽においては『アンモニア→亜硝酸→(中略)→窒素』で完全無害となればそれで安泰…ではありません。それだけでは水質管理としては半分以下。

中途半端に嫌気層について詳しくなった勘違い上級者ほど、この落とし穴にハマります。

たしかに水換えは不要、しかし…

そもそも海水水槽における『水換え』の意味は、淡水のそれとは別モノです。

淡水は水槽の掃除(見た目を綺麗にする)や水を綺麗にすることを目的としますが、海水はそれよりも、

水中の微量元素を補う

という役目が重要。

汚れを取る、ゴミを取る、アンモニアから分解された硝酸塩を薄める、それだけではありません。生物が生活するうえで消費した微量元素(ヨウ素等のミネラル)を補う役目を担っているのです。

つまり、

『水換え不要の水槽システムは可能。ただし微量元素を随時補い続ける必要がある』

ということになります。

これはマリンアクアリストにすればごく当たり前の事で、何も私なんぞが偉そうに講釈たれるような事でもありません。重ねて言いますが『水替え不要』は『何もしなくて良い』ではないのです。

ちょっと考えてみて下さい。

『水槽の水を1/3抜いて、新しい海水に入れ替える』

という手間と、

『何種類にも及ぶ微量元素を計測し、足りない分を添加剤等で補う』

という手間、どちらが楽ですか?どちらがコストがかかりますか?

ただ添加剤を定期的にぶっこめば良いという話ではありませんよ。何が足りないのかを計測し、適切な量を添加。過剰添加は悪影響が出るものもあります。しかも1種類や2種類ではない。

ぶっちゃけ水を抜いて入れ替えたほうが楽なんです。だから水換えをするんです。

ナチュラルシステムとして有名なベルリンシステムも、本来は『水道水をそのまま生き物の水槽に使用できない』という欧州の水質事情から生まれた方式。非常に優れたシステムですが、やはり微量元素の補充は必須となります。

水槽飼育の最終形とも言える水族館も、やはり水換えで飼育しています。

「自然の海は水換えなどせずに維持できています」といったもっともらしい謳い文句で水換え不要システムを売っている会社もいくつかありますが、地球の海洋面積と体積がどれだけあると思っているんですか。そしてそれらを支える環境がどれだけ多様だと思っているんですか。それをたかだか100リットルや200リットルの水槽で再現?それで水換え不要?

あんた地球をナメるにもほどがありますよ、ってなもんですよ。

100%全てがそうであるとは言いませんが、「水換えを怠けたい・海水の素代をケチりたい」という心につけこんで、上手いことばかり言っている商品は多数存在します。それらは「一切なにもしなくとも、良好な水質を何ヶ月も維持できる」というわけではありません。くれぐれも勘違いなさらないように。

追記)

水換え不要系の商品やシステムでは「蒸発する水を足すだけ」として定期的に真水を足す事を指示していますが、これはほぼ間違い。

『蒸発するのは水分だけなので、水槽にラインを引いて目印にしておき、減ったぶんの水を補充するだけで大丈夫!』

…てな事を言っている方もいますが、これもエアアクアリスト丸出しの素人見解。

実際のところは塩分も微量ながら減っていきますので、真水を足すだけでは長期的に見れば塩分濃度は低下します。

つまりしっかりと塩分濃度の計測も必要になるのです。

水換え不要について・あとがき

…ということで、私が常々感じていた「なんであんたら、そんなに水換え不要が理想的みたいなノリなのよ」について、勝手な戯言を垂れ流させていただきました。

いやホント、私も海水水槽遊びを始めて25年が過ぎましたが、たまに

「ずいぶん環境の良い水槽だし、水換えもほとんど不要なんじゃないですか?」

てなことを言われるんですよ。やってますよ、水換え。むしろ多いほうですよ。

水換えは生体に負担がかかるというならば、そこを負担かけないようにやるのが海水生物への愛というもの。「海水水槽の最終到達点」=「水換え不要の水槽」だなんて、勘違いも甚だしい。金や手間を惜しむような人に海の生き物たちと遊ぶ資格はありません。もちろん節約は大事ですけど。

…というわけで、1ヶ月近くも更新してなかったクセにいきなりなぜこんな記事になったかと言いますと・・・最近『とある水換え不要になる(と宣伝している)製品』のセールスがやたらしつこいんです。

しかもこれが『水換え不要=手間いらず』をウリにしており、素人騙しにもほどがある。あんたらのせいで、どれほどの小さな命が巻き添えを食らうと思っているんだ!…という憤慨から叩き出した記事でした。

少々感情的になっているので人によっては不快であったり納得のいかない文章だったかもしれません。すまぬ。

お詫びも込めて、近々『海水水槽をやると女子にモテる話』もしくは『海水水槽をやると胸が大きくなる話』を書きたいと思いますので、どうかお許しを。(予定)

水槽の『水換え不要』に注意!「水換え頻度が減る=楽」ではない…という話”へ2件のコメント

  1. マロン より:

    灰犬さんこんにちは。
    これずっと疑問だったんで大変有難いです。

    やっぱり成分のバランスや濃度(蒸発するため)は変わってきますよね。

    あっ海水水槽やると目があっただけで子供に泣かれなくなる話も候補にお願い致します!

    1. 灰犬 より:

      おこんにちわ!
      やはり世のアクアリストは水換えは面倒くさいのでしょうね…。そこにつけこむ業者と、それを正当化したがる「水換え不要論者」は多いですが、やはり淡水でも海水でもしっかり水換えするのが一番だと私は思っています。

      「海水水槽をやると目があっただけで子供に泣かれなくなる話」ですか!?おお、それはぜひ検証してみたいところです。
      大丈夫、マロンさんは優しい目をしていますよ…。たぶん…。

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