シアノバクテリアも食べる『タツナミガイ』飼育方法・餌・注意点
コケ(藻類)対策としては非常に高い性能を誇るも、そのルックスがネックとされる『タツナミガイ』。あの嫌~なシアノバクテリアも好んで食ってくれるという、海水水槽にとって大変有益な変な生き物でもあります。
タツナミガイ
基本的な飼育方法
適正水温:
24~25℃前後
高水温には弱いので注意
食べるエサ:
珪藻類・柔らかい海藻類
餌付け難易度:特殊
水槽内の珪藻類を食べるが、食欲旺盛なためそれだけでは食べ物が枯渇して餓死しやすい。
アオサや生海苔、ワカメなどを与えると食べることがあるが、環境差や個体差が激しい。
粒状の人工飼料も食べるが、与えるには工夫が必要。
混泳:
いたずらをする魚類や頻繁につつこうとする甲殻類との混泳はやめたほうが良い。
飼育難易度:中
ポイントは『水質』と『エサ』
サンゴなどと同じく硝酸塩に弱い性質があるので、清浄な環境を保つ必要あり。
大食漢なので水槽を綺麗にしてくれた後は個別にエサを与える必要あり。
アメフラシに近い種だが、体内に貝殻を持つ。この貝が「立つ波」に似た形状をしている事からその名がついたとのこと。
水三輪的な飼育情報
まず初めに、声を大にして言わせて下さい。
このタツナミガイ、あっちでもこっちでも『シアノバクテリアを食べてくれるが、そのルックスが問題』『優秀だが見た目から敬遠されがち』などと紹介される事が多いのですが、みんな何を言ってるんですか!目玉が腐ってるんですか!?
海水水槽の生物で1、2を争うほどの可愛さでしょうに!!
ほら、見て下さいよ、コレを!
うにゅーん。隣のライブロックに渡るため、必死に伸びております。
どうですか、可愛いなんてもんじゃないでしょう。もう『可愛い』を絵に書いて額に入れて飾ったようなルックスじゃないですか。これのどこが『鑑賞には不向き』なんですか。わたしゃ、コイツを数時間眺めてても全く飽きませんよ。最高の鑑賞用生物です。
このずんぐりした体型、間抜けな顔、もっさりした動き、全てがプリティ。まるでムーミンみたいじゃないですか。
…などと言うと、ムーミンファンにひどい目に合わされそうですけど。
食べるコケ(藻類)の種類
どこぞのエセアクアリスト共が綴る情報ブログでは『ありとあらゆるコケ(珪藻類)を食べるスペシャリスト!』といった紹介をされていたりしますが、それは飼育経験もないクセに聞きかじりの情報をコピペで垂れ流しているせい。
タツナミガイは非常に食欲旺盛ではあるものの、決して藻類なんでもかんでも食うわけではありません。むしろ食の好みはうるさいほう。
食べるのは『柔らかい植物性のもの』になり、基本はシッタカ貝などと同じように面を削り取るような食べ方になります。
ですので…
こういったブラシのように生える緑色で硬めの藻類はあまり食べません。フワフワと柔らかい藻類であっても、長く伸びたものも好みません(成長したトロロ藻など)。
やわらかくて、ガラス面やライブロック表面にべっとりつく珪藻類
を好んで食べるということになります。
なお起きている間はずーっと食べているため、水槽内の藻類だけではいずれ餌不足になるのは確実。そうなると餓死街道一直線ですので、人間の手でエサを与えることを考えなければなりません。
オススメは生海苔や乾燥アオサ。ワカメを食べるという情報もあります(私の飼育経験では食べてくれませんでした)。
これは飼育水で戻した『乾燥あおさ』をピンセットでタツナミガイに与えているところ。首(?)を伸ばして食べに来る姿が可愛すぎて漏らしてしましそうです。アオサは味噌汁用として売られているものでOK。古くなると香りが減ってあまり寄ってこなくなるので、小袋のものがオススメです。
ちなみにあまり聞かない話ですが、タツナミガイは人工飼料も食べます。
これは『プレコ用の餌』を食べるタツナミガイ。
ただしエサを目指して寄ってくるような事はなく、進路に置いておくとついでにかじっていく程度。こういった大きな乾燥エサは綺麗に全部食べる事もありません。
タツナミガイは底砂が細かい(1mm以下)とナマコのように『底砂ごと食べ、排泄する』という食事もしますので、メガバイトのような粒状のエサを進路上にポトポトと撒いておくと砂と一緒に食べてくれたりもします。
私は底砂の上を這っているのを見かけたときに…
これ、『ヒカリの海藻70』を進路上にバラまいておき、食べてもらっています。
「タツナミガイは粒状のエサなんて食べません。嘘です」とムキになっている方もおられますが、食べますよ。そのうち動画が撮れたらご紹介致します。
いたずら禁止・紫の液
タツナミガイは貝と付きますがアメフラシの仲間。だからといって貝の仲間ではないわけではなく、体内に貝殻は存在します。
このあたりの「ウミウシ・貝・アメフラシ」は親戚みたいなものなので、アメフラシの近縁でもあり貝の仲間でもありウミウシの一種でもある。あまり目くじら立てて細かい事言わず、そんな感じにゆるーく分類しておきましょう。
というわけで、タツナミガイもアメフラシらしく背中の穴(2つある穴の後ろのほう)から紫色の液体を噴射します。
さすがにその写真は撮りたくないので用意できませんでしたが…可愛いからといってツンツンつつきまくるのはやめましょう。
飼育の注意点
安易にシアノバクテリア等の藻類対策だけでタツナミガイを投入するような輩は『寿命が短く、いつの間にか溶けていなくなっている生き物』などと失礼な事を言っていたりしますが、そりゃあんたの飼育方法が悪いから。
ウミウシやアメフラシ同様、水質に敏感な性質を持っており、適当な飼い方では本当にあっという間に死んでしまいます。特にタツナミガイは硝酸塩が苦手ですので、サンゴ水槽に近いような水質管理を心がける必要があります。
「シアノ対策・藻類対策」の生物兵器として投入する方が多いですが、そもそも「シアノだらけ・藻類だらけ」になるような水質管理ではタツナミガイの長期飼育はできません。
タツナミガイの寿命に関して正確なところはわかりませんが3~4年とも言われており、私の経験では水槽で約2年飼育が最長。ちなみにコイツ、最大で20cmを超えるらしいですよ。
(私の飼育経験での最大は15cmほど)
タツナミガイ飼育・まとめ
外見が可愛いかヤバいかは人それぞれなので置いといて。
あまり食べる生き物のいないシアノバクテリアを食べる…という性質は助かりますが、そもそもシアノがやたら発生する場合は生物兵器うんぬんの前に水槽環境を改善する必要あり。
安易にシアノ対策だけを目的として投入すると長生きさせることはできませんので、しっかりそのあたりを考えたうえで水槽にお迎えしましょう。
ざっくりまとめると…
- 柔らかくベットリした藻類が大好物
- 長期飼育にはそれなりに高い水質管理能力が必要
- かなり大食漢。必ず藻類が足りなくなるので、後は餌やりが必要
- 死ぬと水を激しく汚すのは貝類と同じ
- パンツを濡らしてしまうほど可愛い
…となります。外見は人それぞれ…と言いつつ、最後に1個すべりこませておきました。
飼育難易度的にあまりオススメはできませんが、本気で飼育する覚悟があるならばぜひ一度飼っていただきたい生き物でもあります。
それなりに流通量はあるものの、ショップでも短命に終わる事が多いので見かけたら即買いですぞ。