カニ…ではない『アカホシカニダマシ』飼育方法・餌・注意点など
パッと見はカニ。しかし「騙し」の名の通り、実はカニではなくヤドカリに近い『アカホシカニダマシ』。飼育方法や食べる餌、飼育の注意点などの紹介です。
昔は身体の模様で「アカホシカニダマシ」と「コホシカニダマシ」という二種に分かれていたのですが、調査研究の末「模様は違うが同じ生物」という事になり、現在はコホシの名称は使用せず『アカホシカニダマシ』で統一されています。
アカホシカニダマシ
基本飼育方法
適正水温:
25度前後
食べるエサ:
浮遊性プランクトン・ブラインシュリンプ・冷凍コペポーダ・その他プランクトン系・人工飼料等
餌付け難易度:低
水中を浮遊するプランクトンを扇子のような顎脚(がっきゃく。口元にある脚のこと)で濾し取って食べるが、人工飼料も覚えれば食べる。
大型水槽で微生物が豊富に湧く環境であれば特にエサを与えずとも生きるが、一般的な水槽ではエサを与えるのが無難。
混泳:
甲殻類を食べる魚とは不可。大人しいので他の魚を襲うような事は基本無い。同種の複数飼育もOK。
自然界ではハタゴイソギンチャクなど大型イソギンチャクと共生しているので、可能であれば入れてあげると理想的だが、なくとも死ぬことはない。
飼育難易度:中
甲殻類としては珍しいプランクトンフィーダーのため、長期飼育するには飼育環境が大事。
水三輪的な飼育情報
『カニは脚が8本+ハサミ1対だが、アカホシカニダマシはタラバガニなどと同じくヤドカリ近い仲間。なので脚は6本+ハサミ1対なのです』
…などと、いかにもっぽい説明をされている事が多いものの・・・実際に飼育観察してみると顎脚(口元の脚)もあれば、甲羅の先端にこれまた細い脚状のものがたたみ込んであり、おいおいカニより脚多いじゃん!…と思う不思議な生物。
ホント、全然6本じゃないんですよ。
そして次の項で紹介しますが、見た目がカニなのに食性は飼育者泣かせの『プランクトンフィーダー』。ただし比較的簡単に粒状の人工餌や他のエサも食べるようになりますよ。
エサの食べ方
前述したように、アカホシカニダマシの基本スタイルは『海中の微生物をこしとって食べる』という甲殻類らしからぬスタイル。
食事の際もハサミで挟んで食べるのではなく、基本コレを使います。
顎脚(がっきゃく)についたジュリアナ東京!な扇子をフリフリ。「ジュリアナ東京」を知らない人はお父さんかお母さんに聞きましょう。バブル時代のヤバさと共に教えてくれるはずです。ついでに「ワンレンボディコンってなに?」とも聞いてみましょう。
これを使って水中を浮遊するプランクトンをかきこんで食べるのです。
大型水槽で微生物が多く繁殖するような環境であれば無給餌飼育も不可能ではありませんが、できれば人間の手で定期的にエサを与えたほうが無難。水槽環境でのプランクトンフィーダーの死因は餓死が多いですから。
冷凍コペポーダをスポイトでぷわーっとやると、喜んでかき集めてくれますぞ。
しかし、
プランクトン系は水が汚れるから嫌なんだよう!粒のエサは食ってくれないの!?
…と思う方も多いでしょう。大丈夫、アカホシカニダマシは意外とあっさり粒のエサ(メガバイト等)も食べるようになります。
これは水槽内に粒エサ(メガバイトグリーンS)が入り、テンションが上がっているアカホシカニダマシ夫妻。身体が大きく赤い模様が多いほうがメス。
基本的にライブロックから離れる事を嫌うため、そのままの姿勢でどうにかしてエサを拾おうと必死にハサミを動かしております。
…が、やはりそのままの姿勢では食べられないので・・・
結局はこんな位置まで出てくるハメに(笑)。最も大きなハサミでエサを口元に運び、顎脚でかきこむように食べています。
さらに覚えれば小さく千切ったイカなども食べるので、要するに『基本的になんでも食う』という甲殻類の性質は持っている、というわけですな。
↓こちらの記事の動画でちょっとだけ『イカの切り身を食べるアカホシカニダマシ』が見れます
イソギンチャクは必須?
アカホシカニダマシはイソギンチャクと共生することでも有名で、好む種類はハタゴイソギンチャク。カクレクマノミとの共生でも有名な大型イソギンチャクで流通量も多い種になります。
ただし『絶対にハタゴ!』というわけではなく、他の大型イソギンチャクでも共生は可能。さらに言えば『イソギンチャク必須!イソギンチャクがないと生きられない!』というわけでもありません。
ハタゴはイソギンチャクの中でも高価な種類ですし、飼育難易度もやや高め。アカホシカニダマシのためだけにわざわざハタゴイソギンチャクを購入する必要はないと私は思います。
ただしイソギンチャクと共生させたほうが長生きするという情報もありますので、「ハタゴ?んなもん余裕っしょ」という猛者は遠慮なく共生を楽しんで下さい。
飼育の注意点
アカホシカニダマシを飼育するうえでの注意点はやはり『エサの問題』
魚類でも甲殻類でもプランクトンフィーダーと呼ばれる生き物(微生物を食べる種)は人工飼料に餌付きづらいうえに、飼育水槽で発生する微生物では全くエサが足りない。どうにかして人間の手であげようとしても、食わないヤツは本当に食わない。
幸いアカホシカニダマシは餌付きは良いほうですが、冷凍エサ(冷凍ブライン・冷凍コペポーダ)にせよ活ブラインシュリンプにせよ、プランクトン系はどうしても食べ残しが出るうえにフィルターに吸われるので水を汚します。
しかもアカホシカニダマシはエサを追う食べ方ではなく、待つタイプ。顎脚で拾えなかったエサには見向きもしません。上手に工夫し、水質悪化を抑えるようにしましょう。
最も早く安心なのは粒状のエサに餌付いてもらうこと。底砂の目が大きすぎると落ちたエサを拾えないので、パウダーか細目が好ましいと思います。
これは経験上ですが、粒エサへの餌付きは個体差が激しく、早いヤツは1~2日で覚えるものの、遅いヤツは2週間以上かかります。場合によってはプランクトン系のエサを併用してあげましょう。
アカホシカニダマシ飼育・まとめ
流通量も多く、価格もかなりお安い。一見「安価で地味な入門用のカニ」といった雰囲気で販売されているものの、飼育難易度的には決して入門用などではなく、長期飼育が難しいアカホシカニダマシ。
飼育方法と注意点についてざっくりまとめると…
- イソギンチャクはあれば良いが、なくとも飼える
- プランクトン食だが意外と楽に餌付く
- 丈夫で大人しいので、エサの問題さえクリアすれば飼いやすい
…といった感じになります。
見た目が完全にカニなので、購入してから「え、こいつプランクトンフィーダーだったの!?」と慌ててしまいそうですが、落ち着いて根気よく他のエサも食べるように餌付けましょう。
本来は夜行性ですが、飼育下ではすぐに昼行性に変わってきますよ。