謎のトゲ饅頭『オニヒメブンブク』飼育方法・餌・生態など…
『オニヒメブンブク』の飼育方法・食べる餌・生態などについて、実際の飼育経験を元にご紹介しています。

オニヒメブンブク
一般的な飼育方法
適正水温:
24℃前後
エサ:
底砂内の有機物・デトリタス(堆積物)・微生物
混泳・サンゴ水槽での飼育:
可
飼育難易度:高
水槽飼育環境下での食性に不明な部分が多いうえ、飼育に関する情報も乏しい。
餌付け難易度:謎
明確な餌が判明していない為、餌付けできるのかすら謎。
体長は5cm程度。見た目の愛らしさから興味を示すアクアリストは多く、ショップ等でもそれなりに入荷があるので目にする機会は多い。
夜行性で昼間は砂に潜る性質があるので、底砂は必須。荒目ではなく細かいものが好ましい。
水三輪的な飼育情報
ウニの仲間だとか…ウニとヒトデの中間だとか…そんな感じで言われている謎の毛玉生物『オニヒメブンブク』
ちょっと変な名前ですが、まるでウサギのようなそのルックスから「飼ってみたい!」と思った方も多いのではないでしょうか。
全体的にフサフサしてるし尻尾のような毛もあるし、小動物のようで思わずなでたくなるところですが…コレは「毛」ではなく「棘」なので意外に硬くて痛かったり。
基本的に夜行性で昼間は砂に潜っており、ショップでも『プライスカードは貼られてるのに水槽の中に見当たらない』という事が多く、売っているのか売っていないのかわからない生き物でもあります。
夜行性なので注意
その人気のわりに、ブログ等を検索してみても実際に飼育している人の話が少ないオニヒメブンブク。
要因はその「謎の生態」と「飼育の難しさ」にあります。とにかく長期飼育できているという話を聞いたことがない。
そして飼育を続けてみて初めて気づくポイントもあります。それが…
あまり愛でることができない
なにせ夜行性なもので、人間が活動している時間帯は「砂中に潜っている」がデフォルト。
一言で夜行性といってもイロイロあり、「水槽の照明さえ消せば、部屋の明かりがついていても活動を始める」といったタイプもいますし、飼育しているうちにだんだん昼間も行動するようになるヤツもいます。
しかしオニヒメブンブクは餌付ける事もできないため、長く飼育していても暗くならないとほぼ活動せず。せいぜい砂から少し出ているお背中を愛でるくらいです。
時々何を思ったのか昼間っから這っていたりしますが、潜る位置を変えるだけの移動であることが多いです。
オニヒメブンブクの機動力
初めて水槽にお迎えして驚くのはその速度。コイツは本気を出せばウニとは思えないスピードで走る事が可能な素早いおじさんなのです。
少し浮いた状態でスイーッと砂の上を進んでいく姿はまるでルンバのようでもあります。

しゅいーん。
調べたところによると、ブンブク類の移動速度は棘皮生物としては最速クラスだそうな。
水槽投入直後、落ち着くまではあちこち走り回ったりガラス面を登ろうとする事が多い(登れないけど)ので、その機動力を見る事ができますよ。
私も初めてオニヒメブンブクを飼育しはじめた時は、そのアクティブっぷりに驚いたものです。
底砂の状態が適切であればそのうち潜り始めるはずですが、この潜り方もまた特徴的。
ムシロガイやヨウバイ、マガキガイなど…砂に潜る貝は多く存在し、その大半は「グイッ…グイッ…」と、貝の先から少しづつ砂の中に身体をねじこんでいくように潜っていくのですが・・・オニヒメブンブクは「ズズ・・・・ズズズズ・・・」と、身体は水平のまま、微妙に少しづつ沈んでいくように潜るんです。これがまためちゃくちゃ遅いけどカッコ良い。
ただし水槽環境に慣れてしまえばそれほど素早く走り回ることは無し。特に身の危険を感じなければ、ゆっくりまったり行動しているのが普通なのでしょう。
オニヒメブンブクのエサ
食性に謎な部分が多いブンブク。複数個体を合計5~6年は飼育しましたが、「食ってる!食ってるぞ!」という姿を明確に見たことはありません。
ヒトデやウニのようにエサに乗っかって「食ってる感」を出してくれれば良いのですが、コイツはそういう食べ方は決してしない。
飼育を始めた当初、実験的にワカメやキャベツなどのウニ類が好むようなエサを入れてみたことはありますが…くっついてモシャモシャ食べる事もありませんでした。
どうやらコイツは『底砂中のデトリタス(堆積物)や微生物を食べる』という食性らしく、ゆっくり移動しながら底砂に溜まった有機物や極小の生き物を食べているようです。
どちらかと言うとウニというよりもヒトデやナマコに近い食性。ウニとヒトデの中間…という話も納得ですな。
「オニヒメブンブクはゴカイを食べる」という説もありますが、決してゴカイ専門に捕らえているというわけではなく、堆積物を食べている間に小さなゴカイなども一緒に食べているのでしょう。
ならば…という事で「粒の細かい沈下性のエサ」を歩いてる先に置いてみたり、「冷凍アカムシや冷凍コペポーダ」を底砂に混ぜ込んでみたりを試しましたが、やはり喰っているのか喰っていないのか不明です。
おそらく食べてはいると思うのですが…。
底砂は大事
食性が「底砂内の堆積物や微生物を食べる」ですので、飼育するならば底砂は必須。
オニヒメブンブクは底砂に潜る性質があるので、底砂の撹拌作用も期待できます。さらに潜るだけではなく砂中で移動もしているので効果は高め。
ただし、砂の中を移動するのは底砂がパウダー~1mmに近い場合のみ。中目程度のサンゴ砂でも潜ることはできますが、できるだけ細かいほうが好きなようです。

市販のサンゴ砂ならば粒の大きさは3~4mm程度までが限界。それ以上大きい粒でも飼育は可能ですが、しっかり潜れなくなるためか長生きしません。
理想はパウダー~1mm程度で、深さは最低でも2~3cmは欲しいところ。
(上の写真はマメカルシウムサンドで飼育している個体。粒は1mmほどですが問題なく潜れるようです)
パウダー5cm厚でも飼育していますが、予想以上に深いところまで潜っていたりします。
パウダー砂は各メーカーからアレコレ出ていますが、個人的にはコレが非常に安くて色味も良くオススメですよ。
「パウダー」よりも粒の小さい「超細かいパウダー」もあり、そちらは泥に近いほどの細かさ。とにかく細かいのが良い!という方は「超細かいパウダー」を試してみましょう。私も使用していますが、とても美しいですぞ。
ただし導入時に白濁が取れて落ち着くのに時間がかかり、かなり舞い上がるのでご注意を。
オニヒメブンブク飼育方法・まとめ

飼育情報が少ないうえに明確な給餌方法も確立されていないオニヒメブンブク。
「飼育は簡単」とは言い難いですが、飼育のポイントをまとめると…
オニヒメブンブク飼育方法とポイント
・可愛いが夜行性なのであまり出会えない
・食べるのは『砂中の堆積物と微生物』。人工飼料や冷凍エサを砂に混ぜれば食べるかもしれないが、確認できないのでなんとも言えず。
・底砂は必須。できるだけ細かいものを。厚さは2cm以上欲しい。
・死ぬと棘がバラバラ散らばり、つるんとした殻だけが残る。
なお身体の大きさのわりに強引にグイグイと進むわけではないので、よほど不安定な組み方をしない限り、ウニ類にありがちな「レイアウトをガンガン崩していく」といったトラブルはありません。ガラス面も時々登ろうとしますが、ほぼ登れません。
夜中にこっそり見に行けば出会えますので、真っ暗な部屋でじっくり愛でましょう。ツンツンとつつくと棘をブワッと逆立てて可愛いですが、多分嫌がっているのであまりつつかないように…。
2019年3月追記)
残念ながら最後の1匹が他界しました。飼育年数は約2年。
他に飼育している方の情報が少ないので、これが長いのか短いのかわかりませんが・・・
喪が明けたら次は「オニヒメブンブク専用水槽」を用意して、じっくり観察しながら再び挑戦してみたいと思っています。