海水水槽を底面濾過+外部フィルターで作ってみよう
アクアリウム、特に海水水槽において『濾過』は非常に重要。
物理的な濾過で単純に「目に見えるゴミをとれば良し」といっただけではなく、生き物が生きていける環境を維持するためにはバクテリアがアンモニアを亜硝酸から硝酸塩に…といった目に見えない『生物濾過』も大事になってきます。
・・・が、そういった内容はたくさんの方が記事にしていますし、今回はそういうネタは置いといて・・・ビギナーの方も楽しめるノリの「海水水槽を底面濾過で立ち上げて遊ぼう!」的なノリの話です。
底面濾過とは?
濾過装置と言っても外掛けやら外部やらと種類がありますが、その中に『底面濾過』という方式があります。
仕組みはいたって単純。底砂の下に空間を作り、水を循環させるだけ。
基本的には特別なろ材も使用せず、底砂がそのままろ材として働きます。
一般的に売られているのはこういったもの。
「はい?これがろ過装置?」とツッコミたくなるような、ただのプラスチック板と煙突ですが、立派な『ろ過装置』です。
最もシンプルな使い方はパネルから煙突状に伸びるバイプにエアレーションをかけ『泡の力で水流を起こす』というもの。所詮エアレーションの力なので流量はたいしたことありませんが、同時に酸素も供給できて一石二鳥。煙突二本でダブル形式にするのも有効です。
さらに吸い上げに水流ポンプを使用したり、パイプを他のろ過装置(外掛けフィルターや上部フィルター)と接続することも可能。非常に自由度の高いカスタマイズを施す事ができる濾過方式になります。
(他フィルターとの接続に関しては様々な意見あり)
接続するのではなく別個に『底面フィルター(エアリフト方式)&外掛けフィルター』といった使用方法も有効ですので、ただエアストーンを入れて泡を出すくらいならば底面フィルターにしてしまったほうが効率的だったりも。
使い方のコツを掴む必要はありますが、使いこなせば淡水海水問わず優れた効果を発揮する方式なんです。非常に地味ですけど。
底面濾過のメリットとデメリット!
- シンプル簡単。エアレーション形式ならば酸素も供給できるうえに、他に特別な電力も必要としないのでエコロジー。
- 吸い込みがないので微生物や稚エビなどを吸ってしまう事もない。
- パネルだけなら安くてお財布に優しい。消耗部品もないのでさらにお財布に優しい。
- 底砂全面がろ材となるので生物ろ過能力は高いが、物理濾過も底砂でおこなう事になるので砂が汚れる。
- 一度埋めたらリセットしない限り掘り出す事はほぼ不可能。
設備をセッティング
…という事で、新たに底面濾過方式の水槽を1本立ち上げてみましょう。
シンプルに『フィルター敷いて、サンゴ砂を乗せて、エアレーションで…』といった方式ではつまらないので…ちょっと変な形式で作ってみます。
まずは水槽。初売りで購入したので『福袋』の表示つき。
前面曲げガラスのフレーム付き水槽・KOTOBUKIのプログレ60cmになります。上部フィルターがセットになっていますが、コレは使わずに倉庫行き。
まずは底面フィルターを敷くのですが、市販の『60cm水槽用』となっている製品はぴっちり底面を埋めることができず、かなり余白がでる寸法になっています。
それでも良いのでしょうが…なんとなく底面全面をフィルターにしたいじゃないですか。そんな時はコレ。
『水作 ボトムフィルター』を使います。この商品、1枚の寸法が「135x135mm」になっているので8枚使用すると「540x270mm」となり、標準60cm水槽を綺麗に全面埋めてくれるんです。
(SとMのパネルは同サイズ。入っている枚数が違う。ミニはその半分サイズ)
じゃじゃん!敷きました。きっちり隅々までパネル化。
遠いうえに他のパイプ類もすでにセットされちゃってますが、まさか記事として書くなんて思わずに製作していたので写真が少ないんです…。
接続されているのは同じくKOTOBUKIの『パワーボックスSV900X』
「底面フィルターと外部フィルターを接続!?そんなことしたら外部フィルター内が酸素不足になっちまうだろ!」
…と思った方、なかなか小賢しいですな。
ところがしっかり立ち上がると鬼の生物ろ過能力を発揮するんですよ、この方式。
かなり独自の理論故に詳しくは説明しませんが…底面フィルターを通すことで外部フィルターに物理濾過をさせない、というのがミソです。
ところでどうでも良い話ですが、外部フィルターのホース類って固くて取り回しづらくありませんか?キスゴム(吸盤)で固定しても、ちょっと本体を動かすだけで外れてしまったり…
…という事で、がっつりボルトを使って固定しました。
これならば外部フィルターを掃除する際、ちょっとやそっと引っ張ってもパイプが動くことはありません。
ああ、美しい。パイプ同士のキッチリとした直角感&水平感。それらがしっかり固定され、ズレることもない堅牢感。まるでコンビナートの配管のようで、うっとり。
私はこの『セッティングして水を入れる前』の水槽が一番好き。できることならばこのまま、水など入れずに水槽だけを愛でていたいくらいです。
…とも言ってられませんので、水を入れて底砂を入れましょう。今回、砂は普通にサンゴ砂の中目タイプを使用します。
底面濾過なのでやや厚め、7~8cmで敷きました(うち1cmはフィルターの厚み)
底砂だけ入れた状態で約1週間稼働させたら…
どどんっ。新たに仕入れたベースロック用の安いライブロックをセッティング。
ライブロックを購入する際、赤い石灰藻でがっちり覆われたグレードの高いものを選ぶ方が多いですが…ライブロックの大事な目的である濾過性能に関しては、ぶっちゃけ赤でも白でも変わりません。ほっとけば勝手に赤くなるので私はいつも真っ白ライブロックを買います。
この状態で1ヶ月経過ほど放置します。
ライブロックを保管しているキュアリング水槽から、ちょっと汚れたライブロックと飾りサンゴを追加。最初に入れたライブロックから繁殖したヨコエビ類があちこちでピコピコしています。
なおエアレーションは使用せず、シャワーパイプをディフューザー加工しています。私はエアーポンプの音が大嫌いなので、なんでもかんでもディフューザー。
ディフューザー加工の記事はコチラ
ノーマルなアクアリストならば早く生き物を入れたくて仕方ないところなのでしょうが、私は『メインの生き物がなにも入っていない水槽』も大好きなのでむしろ好都合。
なんなら一生このままでも構いませんな。
そしてさらに1ヶ月経過したならば…
再びライブロックを追加してレイアウト。
ヨコエビが大量に増えているのでスポッテッドマンダリンを移住させました。藻類対策にフシウデサンゴモエビとマガキガイも。調子が良いのでスターポリプの養殖にも使用します。
海水水槽で底面濾過・あとがき
その後も水槽環境は非常に良好。石灰藻も増え、エビも抱卵し、スターポリプも成長しています。
底面濾過方式なので謎の微生物も稚エビも吸い込まれることなく、あっちでもこっちでもピコピコ。これだから底面濾過はやめられませんな。
その後、約半年でこのようになりました。ライブロックもだいぶ赤くなりましたし、底面濾過のおかげで小さなケヤリもクモヒトデも増加中。
水槽の濾過方式はイロイロあれど、個人的に海水水槽において最も良好な環境を作り上げられるのは『底面濾過方式』だと思っています。
単純に「真ん中に敷いてエアレーションでぷくぷく…」では限界がありますが、アレコレ工夫すれば無限の可能性を秘めた方式ですよ。
さてさて…次はどんな水槽を立ち上げましょうか…
今回使用した主な商品