エビ・カニ・ヤドカリ『脱皮』失敗を防ぐために大事なこと
エビ・カニ・ヤドカリ等の甲殻類にはつきものの『脱皮』、しかし脱皮不全(脱皮失敗)により弱ってしまったり亡くなってしまうことも・・・。今回は海水水槽飼育での脱皮失敗を防ぐため、原因となる要素や注意点などをゆるーくご紹介致します。
注)
海水飼育の話ですが、一部淡水にも共通する点はあります
脱皮
海水水槽飼育できる生き物で『脱皮』といえば、一般的にはエビ・カニ・ヤドカリなどの甲殻類が基本。
(それ以外にもカブトガニや一部の魚などは脱皮をする)
表面の殻を脱ぎ捨てることで大きくなる…と聞くと「いやいや、それじゃどんどん小さくなるのでは!?」と思ってしまいますが、いつもは硬い甲殻類も脱ぎたてホヤホヤは柔らかい状態。
わかりやすーく言えば…
『硬い殻の表面を脱ぐ』
↓
『柔らかいので少し大きくなれる』
↓
『固まって硬くなる』
↓
『硬い殻の表面を脱ぐ』
↓
繰り返し
…というループで成長していくわけです。
しかし彼らにとって『脱皮』というのは命がけの行為。脱皮直後の柔らかい状態は捕食者に狙われやすく、脱皮そのものに失敗してしまうことも。
水槽ならば混泳にさえ気を付ければ喰われることはありませんが、脱皮失敗に関しては水槽の環境も影響してきます。『脱皮不全(脱皮失敗)』に繋がる要因はいくつかありますが、大きな注意点は2つ。『微量元素』と『水槽環境』になります。
まずはその2点についてゆるい説明と対処法を。
脱皮失敗の原因1『ヨウ素不足』
甲殻類の脱皮には『ヨウ素』という栄養素が必要不可欠で、これが不足してくると脱皮不全(脱皮失敗)を起こす可能性が高まると言われています。
市販の人工海水の素には多数の微量元素が含まれており、しっかり定期的に水換えをすれば自然とヨウ素も補充されるのですが、それでもヨウ素不足になる場合も。
その原因となる要因をいくつかご紹介します。
ヨウ素不足の原因
①プロテインスキマー
主に水槽内の余剰たんぱく質を取り除くのに使われる『プロテインスキマー』という設備。
このプロテインスキマーは汚れだけでなくヨウ素も排出してしまうと言われています。
後述する『ヨウ素添加剤』の使用説明にも、『添加後は一定時間スキマーを停止して下さい』と注意書きされている場合があります。
②殺菌灯
水中のよろしくない雑菌対策に使われる『殺菌灯』、白点虫対策で使用している方もいるかと。
この殺菌灯もヨウ素を分解してしまうと言われています。
③水替えしないが添加剤も入れない
なぜか海水水槽ビギナーに信者が多い『水替えしなくても綺麗な水槽=良い水槽』という、変な宗教。
私もたまに「とても良い環境ですね。これなら水替え頻度も少ないのでは?」とか言われることもありますが、バカ言っちゃいけません。淡水と違って海水の水替えは『水を綺麗にする』のが目的ではなく『硝酸塩の排除と微量元素の追加』が重要なのですから。
ちと小難しい話になりますが…嫌気層が立ち上がって窒化が安定し、硝酸塩が検出されなくなった水槽でも『なんもしなくて良い、楽な水槽』ではありません。その分、アレとかコレとか多数の添加剤を入れる必要が出てくるのです。むしろめんどくせぇったらありゃしない。
上手に水槽管理ができるようになると、ごくたまにしか水替えしなくとも『見た目は綺麗な状態』を維持できるようになりますが、そのままではヨウ素など消費される栄養素は枯渇します。
『水替えしない水槽』について余計な話が聞きたい方はこちらの記事でどうぞ。
ヨウ素不足の対策
ぶっちゃけプロテインスキマーも殺菌灯も使用していないならば、『定期的にしっかり水替えをする』だけでヨウ素(その他の微量元素も)不足はほぼ防ぐことが可能。
しかしヨウ素が足りなくなる要素(シャレではない)があるならば添加しましょう。
様々なメーカーから様々な製品が販売されています。モノによってコスパや保存方法が異なるので注意。
なおヨウ素の入れすぎは弊害もあります。
ヨウ素は減少が早く安定しないうえに、目に見えるものでもない。計測するためのテスターも一般的ではありません。
不安だから念のために…とドバドバいれるのは非常に危険です。水槽環境と水替え頻度を考慮したうえで、規定量をしっかりと守りましょう。
脱皮失敗の原因2『環境』
甲殻類は脱皮の時期になればどんな状況でもペロッペロと脱ぐわけではありません。前述したように脱皮は命がけの作業。適した環境がなければ失敗のリスクも高まります。
女性だってどんな場所でもペロッペロと脱いではくれないじゃないですか(一部特殊な性癖を除く)。脱いでもらうための状況作りは大事ですぞ。
これは事項で種別に記載しますが、『エビ・カニ・ヤドカリ』の脱皮御三家の中で特にヤドカリに関しては注意が必要になります。
種類別:脱皮のポイント
海水水槽で脱皮と言えば『エビ・カニ・ヤドカリ』、いわゆる『脱皮御三家』が代表ですな。
昭和歌謡ならば『橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦』、続く新御三家は『野口五郎、郷ひろみ、西城秀樹』、バンドブームの頃は『有頂天、THE WILLARD、LAUGHIN’ NOSE』がインディーズ御三家と呼ばれていました。いったいなんの話をしているんだわしは。
基本的なその3種について、それぞれのポイントを並べてみます。
野口五郎
ごめんなさい、ネタをひっぱりすぎました。
野口五郎は脱皮しません。
こういう余計なワードを入れるからウチは検索順位が低いのですが、こればっかりはやめられず。
エビ類
御三家の中でも脱皮頻度が高い(種による)エビ類。
彼らは特にヨウ素に注意。
脱皮は得意な種類が多く脱皮不全で亡くなってしまうケースは少ないですが、ヨウ素が枯渇している環境では脱皮そのものの頻度が低下することもあります。
カニ類
カニも基本的に脱皮は得意なほうですが、コイツらは『脱皮でハサミや脚を1本失う』ということが多々あり。
特にヨウ素が足りない状況ではそういった事が多くありますが、環境に問題がなくともハサミが1本なくなったりも。
しかし心配ご無用。適切な飼育環境を維持できているのであれば1~2回の脱皮で元に戻ります。
彼らは脱皮殼がリアルすぎるため、「カニが死んだー!」と嘆いていたら奥からひょっこり顔を出した…てなことも多々あるお茶目な生き物でもあります。
ヤドカリ類
御三家の中で最も脱皮不全が多く、神経を使うのがヤドカリ類。
脱皮殻をうまく脱ぐことができず、弱ったりそのまま亡くなってしまったり…。
適切なヨウ素はもちろんですが、彼らは脱皮の際に底砂や岩にこすりつけるようにして殻を脱ぐため、『適切な底砂等』がないと脱皮に失敗してしまう危険性が高まります。
ベアタンク(底砂無し)や、ツルツルで綺麗なガラス砂などは脱皮失敗の可能性を高めるのでやめましょう。
ヤドを変えるための適切な貝殻も必須です。
脱皮不全を起こしていたら?
脱皮が中途半端な状態になっている場合、人間の手で脱皮をさせてあげることも必要になってきます。
恐る恐るやっていると負担をかけるので、できるだけ大胆かつ速やかに、ハサミやピンセットを使って殻を脱がせてあげましょう。本体の部分は柔らかいので注意。
ただし人間の目につくような場所で中途半端に止まっている場合、すでに弱っている場合がほとんど。最悪の場合の心の準備もしておきましょう。
『脱皮』に大事なこと・まとめ
脱皮に失敗させないために大事なことは、飼育する上で大事なことと同じ。『適切な環境で飼育しましょう』というのが結論になってしまうのですが、特に注意するとすれば…
- ヨウ素の枯渇に注意
- 環境(底砂・ライブロック等)も整えよう
- 上手くいってなければ人の手で助けも
…といった具合でしょうか。
甲殻類以外の生き物に関する脱皮は個別にアレコレと異なるので今回は割愛。
ついでにココで『女性を脱皮(脱衣)させるために大事なこと』も書いてふざけようかと思ったのですが、稀に女性の閲覧者もいるのでやめておきます。さらに検索順位が下がってしまいますし・・・。