白点虫を食べる?『マクガイ』飼育方法・寿命・白点病への効果など
『白点虫を食べるので白点病の予防に効果があります!!』…という謳い文句で販売されることが多い『マクガイ』。非常に地味で安価な二枚貝の飼育方法やポイント、本当に白点病対策になるのか…などなどをご紹介致します。
マクガイ・飼育方法
適正水温:
20~25℃
食べる餌:
水中の有機物・サンゴ用フード
餌付け難易度:中
二枚貝ゆえ、食べているのか食べていないのかわからない。
混泳:
二枚貝を食べるような生き物でなければ同居は可能。
飼育難度:中
微生物が多く発生するような環境が必要。そうでない場合は給餌が必要に。
白点虫だけ食べて生きる…などという事もない。
マリンアクアリウムでは『白点病対策』として有名な二枚貝。
地味で鑑賞向きでもないため、それ以外での投入理由はあまりない。
価格は安価。
水三輪的なマクガイ情報
とにかく地味。もはやただの黒っぽい板切れ同然で水槽映えする事もない。
鑑賞には恐ろしく不向きなルックスのクセに、なぜかショップでよく扱われている理由、それは…
白点虫を食べるので、白点病対策に効果あり!!
…というもの。
まずはマクガイ最大の特徴でもある『白点病に有効なのか?』という点から掘り下げてみましょう。
注!)人によって意見は異なります。あくまでも私個人の経験と考察によるものです。
白点病とは?
その前に…『白点病とはなんぞや?』というところを珍しく真面目にご説明しておきます。
淡水・海水問わず存在するため、魚の病としては非常に有名な『白点病』
しかし淡水での白点病と、海水での白点病は呼び方が同じだけで別モノだったりするんです。
白点病ってどんな病気?
『白点虫』と呼ばれる繊毛虫が魚の体表に寄生し、白い斑点のようになる病気。
淡水・海水で呼び名は同じだが、淡水では『イクチオフチリウス(和名:ウオノカイセンチュウ)』、海水では『クリプトカリオン』という別種の繊毛虫による寄生のため、対処法や使用する魚病薬は異なる。
淡水・海水ともに『魚の体表に寄生』→『成長後に体表を離れシスト化』→『水中や砂中で分裂・増殖』→『再び魚に寄生』というサイクルを繰り返す。
体力が落ちている生体ほど寄生されやすく、病状も深刻化しやすい。魚種によって白点病に罹りやすいものもいる(ハリセンボン等)。
淡水・海水ともに薬品による対処法があるものの、効果的に使用する事が難しいうえ魚にも負担がかかる場合が多い。水槽内の白点虫を完全に駆除する事はほぼ不可能。
アクアリウムでは最もポピュラーな病気ですが、深刻化すれば魚の命も奪う恐ろしい白点病。
しかし購入した生体やその飼育水から混入する事が多いので完全に防ぐことは不可能。「全ての水槽内に白点虫はいる」と言っても良い状態だったりします。
ベントスと呼ばれる底生魚(底砂の上で生活する魚)は、その生活スタイルから白点病に強い傾向性があります。
マクガイは白点病予防になる?
さぁここからが本番。
『マクガイは白点虫を食べるのか?白点病予防に効果があるのか?』
…というところを。
しつこいようですがあくまでも『私個人の見解と経験による結論』ですのでご理解を。
結論から言ってしまえば…
さほど効果はありません。
マクガイは二枚貝ですので魚の体表についた白点虫を狙って食べているわけではありませんし、砂中の白点虫(シスト含む)を食べているわけでもありません。彼等は水中を漂う白点虫(の仔虫)を他の有機物と一緒に濾し取っているだけ。広い水槽に1枚や2枚入れたところでほぼ何も変わりません。
今現在、爆発的な白点病に悩まされている…というのであれば、マクガイを10枚くらい入れれば多少は白点虫の増加を防げるとは思いますが・・・それで白点病が治療できるわけではありませんし、白点虫を根絶できるわけでもありません。
しかも貝類は死ぬと激しく水質を悪化させるので、白点病目当てだけで入れるのは効果よりもリスクのほうが高すぎる。マクガイ10枚買うくらいならばヨウ素殺菌筒(殺菌灯ではありません)を買ったほうが何倍も白点虫に効果がありますよ。
さらに言ってしまえば、『しっかりと時間をかけて立ち上げ、水槽サイズに合った生体数を保ち、良好な環境を維持し、餌を適切に与えて飼育する』というのが最大の白点病予防法。
とどのつまりは「変な小細工を考えずに、基本をしっかりとやれ」って事ですな。アクアリウムだけに限らず物事ってだいたいそんなもんです。
マクガイの飼育・置き方
白点病対策だけが水槽内での存在意義とも言えるマクガイにとっては、身も蓋もない結論になってしまいましたが…それが現実。これを入れるだけで白点虫に絶大な効果を発揮するというならば、白点病に悩むマリンアクアリストは今ごろもっと減っているはずです。
そもそも、売る側の話を鵜呑みにすること自体がナンセンス。彼等の目的はあなたの水槽をより良い状態にする事ではなく、利益を上げる事ですよ。
…と、マクガイ全否定のようなことを書きましたが、「そういうオマエは実際にマクガイ入れたことあるのかよ!」と言われないよう、マクガイの写真を披露。
ほーらほら、我が家の可愛い『冒険野郎マクガイバー』ですよー(知らない人はお父さんに聞きましょう)。
ほぼ動かず、コミュニケーションもとれず…ただのオブジェみたいなもんです(笑)
マクガイ飼育のポイント
・通常の飼育水槽では餌が足りないので、個別に液体フードや冷凍コペポーダを与える必要あり。
・給餌の頻度は環境(微生物の量)にもよるが、週1~2回程度を目安に。
・多少水流があったほうが良い。強すぎるのは良くない。
・セッティングは口が上向きになるように。かなり強力に定着するので設置場所に注意。
なお上の写真はそれっぽい雰囲気で撮影できるよう、一旦外して下に置いたもの。嫌がってバフバフしたせいで砂が舞い上がっています…。
本当は下の写真のように、口を上に向けてくっついているのが正しい状態です。
(一旦はずしてしまったので斜めになっていますが、理想はまっすぐ上向き)
人間の感覚だとそのまま地面(底砂)に平らに置きたくなりますが…自然界でのマクガイは上を向いて密集し生息しているため、水槽に入れる際には上向きに定着させる必要があり、広い底砂にペタンと置いたような状態では短命に終わってしまいます。
シャコガイを想像するとわかりやすいですが、マクガイに限らず海洋性の二枚貝は『蝶番部が下、口が上』の状態がデフォルトのものが多かったりします。(全てではありません)
マクガイは薄っぺらくそのままでは立ちませんが、だからといって底砂に半分差し込むようなやり方ではもちろんダメ。ライブロックの根本などに定着させるのが理想なので、しっかり定着するまでは支えをつけてあげると良いでしょう。
場所さえ気に入って元気であれば2~3日程度で定着しますよ。
マクガイ飼育・まとめ
…ということでマクガイに関してざっくりまとめると…
- 水温・水質の変化にはそれほど弱くないものの、長生きさせたいならば給餌もしくは微生物が豊富に湧く環境が必要
- 白点病対策として1~2枚入れたところでほぼ効果なし
- 大量に入れれば効果があるかもしれないが、リスクも高い
- セッティングは必ず縦に。底砂に平置きでは長生きできない。
…といった感じに。
一言で言ってしまえば『白点病や白点虫を理由としてマクガイを入れるのはやめたほうが良いよ』という事になります。
なお「マクガイは長期飼育が難しい」という話も聞きますが、それは環境とエサが適切ではないため。しっかり縦に固着させ、適度な水流(直撃はダメ)を作り、微生物が豊富に繁殖する環境にしてあげれば数年は生きます。
サンゴ礁とはひと味違う「磯」っぽい雰囲気があるので純粋に観賞用・レイアウト用として投入するのも良いかと思いますが、果たして「白点病」というポイントを除いてマクガイを購入する方がどれほどいるのか…。