『水槽用ヒーター』設定温度よりも高温(または低温)になる時は?
今回は『水槽用ヒーターが設定温度よりも高温(もしくは低温)になる場合は?』をテーマにゆるーいお話。
水槽用ヒーターには基本的に『設定温度』というものがあり、自動でその温度に調整してくれますので、異常に高温(もしくは低温)になった場合の大半は故障もしくは寿命。しかし稀にそれ以外の原因があったりもするのです。
追記)
GEX製ヒーターの一部で『温度が異常上昇する』という事故が発生しています。リコールとなった製品もありますが、リコール対象外の機種でも同様の現象が多発しているようです。その件に関してはコチラ↓
水槽用ヒーターの基本の「き」
温度問題の前に水槽用ヒーターの基本を少々。「んな事知っとるわ」という方は水槽の掃除でもしていて下さい。
ヒーターは大きく分けて
『オートヒーター』(本体のみ)
『一体型ヒーター』(ゴツめの本体)
『単体型ヒーター』(サーモと併用)
の三種類。
詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。電気代などにも触れています。
この三種類のどれを使用しているかによって、水温異常の原因や対処法が変わってくる場合があります。
自分が使用してるのはどのタイプか…をしっかり理解したうえで、原因と対処をご覧ください。
そして高温にせよ低温にせよ、水槽用ヒーターに異常を感じた場合は、
新しい製品と交換する
…というのが基本。
冒頭でも書きましたが、機能異常の原因はヒーターの故障、もしくは経年劣化によるものが大半。
製品によって耐用年数は異なりますが一般的に1~2年での交換が推奨されており、海水で使用した場合、寿命は淡水の半分になると言われています。
水温の基本の「き」
さらに、水温計測に関する基本も念の為に。ベテランの方はまだ掃除を続けていて良いですよ。
オートヒーターは固定の設定温度があり、一体型ヒーターや単体型のサーモにも温度設定ボリュームが付いています。ただし、その数字通りキッチリ正確に維持できるというわけではなく『±1.5℃』程度は誤差の範疇。
そして水温を計測している『水槽用水温計』、この水温計自体にも『±1.5℃』程度の誤差があるのです。
ということは…あくまでも理論上ですが、『ヒーターの誤差』と『計測する水温計の誤差』が同じ方向に振れれば『±3℃の誤差』が出る可能性があるということになります。
極端な話、26℃設定のオートヒーターで水温計の数値が29℃と表示される可能性がある…という事です(この場合実際の水温は27.5℃)。
んな馬鹿な…と思うかもしれませんが、1つの水槽内に複数の水温計を設置してみると、最も高温のものと低温のもので2~3℃の差がでることは決して珍しくありません。
「水温がおかしいな?」と思った場合は、まずは水温計を変えて確かめてみるのも有効な手段です。
ちなみに…水槽のガラス面に貼るだけで水温を計測してくれる『コードレス水温計』と呼ばれる製品は外気温によって激しい誤差が出るため、あくまでなんとなーくの目安にしかなりません。正確な水温を知りたい場合は水中に入れるタイプ(できればアナログ式)を使用しましょう。
設定温度よりも低温になる
ではでは。
製品には全く問題がないはずなのに、水温がおかしいんだっ!!…という場合の原因と対策。
『設定温度よりも、水温が低くなる場合(設定温度まで上がらない)』から。
容量が足りていない
水槽用ヒーターには容量(60W等)というものがあり、水量に対して適切でないと冬場などは設定温度まで上げられない場合があります。
ヒーターとクーラーに関しては完全に「大は小を兼ねる」ですので、予算とサイズ(大容量は大きい)が許すかぎりW数の多いものを設置したほうが経済的。容量ギリギリで目一杯頑張るよりも電気代もお得になります。部屋のエアコンと同じですな。
対処法
・十分に容量のあるヒーター(ワット数の高いもの)に変更する。
・もしくは南国へ移住する。
設置が不適切
単体型ヒーター、もしくはヒーター本体と温度センサーが別になっているタイプのオートヒーターは、『ヒーター本体』のすぐ上に『温度センサー』を設置してしまうと、正しい水温を計測することができずに設定温度よりも水温が低くなってしまいます。
(高温になって上昇した水を計測してしまうため)
そしてヒーターや温度センサー周辺の水の流れが少なすぎると、これまたしっかりと温められないことも。
なお、あまり神経質になる必要はありませんが、ヒーターは基本的には横向きに設置します。最近は縦向き設置可能な製品が多くなってきましたが、横向き推奨のヒーターを縦に設置すると誤差が大きくなる可能性があるので注意。
もちろん底砂に埋めたりするのは言語道断、三角木馬の刑です。
対処法
・ヒーター本体と温度センサーの位置は離す。
・流れがよどまない場所に設置する。
(ただし強い水流が直接当たり続けるような場所もよろしくない)
・もしくは三角木馬にまたがる。
設定温度よりも高温になる
症状としてヤバいのはむしろこちら。
『設定温度よりも、水温が高くなる場合』の原因と対処法を。
単体型のみで使用している
水槽用ヒーターの種類で説明した『オートヒーター』と『単体型ヒーター』は見た目が非常に似ていますが、性質は別モノ。
こちらが『単体型ヒーター』、見た目はそのまま『長いオートヒーター』に見えます。
『オートヒーター』は規定の温度(基本的には26℃)にするため、勝手に電源を入れたり切ったりしてくれています(安価な製品には一定温度でずーっと起動しているタイプもあり)。
ランプ等もなく外見では判断できませんが、無表情でしっかりアレコレ調整してくれているのです。
しかし『単体型ヒーター』はサーモスタットが電源の入切を担当するため、単体で使用すると電源が入っている限り水を温め続けます。『単体型』と呼ばれているくせに、単体で使ってはいけないとは紛らわしい。『単体女優』なのに『企画モノ』にばかり出演しているようなものですな。
自分で購入したものではない、もしくは中古品でパッケージが無い…といった場合は注意。間違えないようにしましょう。
対処法
・単体型ならばサーモスタットを購入。またはオートヒーターに変更。
・もしくは『どうしてこんなに紛らわしい形状にしているんだ!』と、執拗にメーカーに苦情を入れて改善を迫る。
水温が異常な場合・まとめフロー
…と、一般的な範囲での『水温が異常になる場合・原因と対処法』をならべてみましたが、上記以外の原因である可能性もおおいにあります。
あくまでも基本的として、水温に異常を感じた場合の対処をざっくりフローにすると…
- 水温がおかしい!
- 原因究明よりも先に水槽内の生き物を守ることが最優先。
まずはヒーターの電源を抜き(取り出すのは確実にダメと判明してから)、温度が低ければ予備のヒーターを投入。高ければクーラーを使用。
どちらもない場合は知恵を絞って水温調整。
- (予備があれば)水温計を変えてみる
- 水温計によって数値が異なるのは珍しくありません。予備があればそちらを入れて計測してみましょう。
特に「電池・液晶型」の水温計は精度が怪しいうえに故障しやすいので要注意。
- 自分を疑ってみる
- 自分は絶対に間違っていない!!と、すぐムキになるのはお子様の証。
まずは大人の余裕で「もしや吾輩に落ち度があったのでは?」と再確認しましょう。
設置位置は大丈夫ですか?温度センサーが空気中に露出したりしていませんか?
温度調整ダイヤルがへんな位置になっていませんか?
ヒーターだと思ったら大人のオモチャだったりしませんか?うぃんうぃんいってませんか?
- ヒーターを交換する
- どの水温計で計測しても異常、全てを再確認しても異常…となれば、ほぼ確実にヒーター自体に問題があります。取り出しましょう。
なにげに水温異常の原因は経年劣化、もしくは何らかの理由によるヒーターの故障…というパターンが大半。
一般的に水槽用ヒーターは1~2年で交換することを推奨されています。
なお海水での使用は、淡水使用時の半分の寿命になると言われています。
- 最終手段
- ヒーターを新しいものに交換してもなお「水温がっ!水温がぁぁぁ!!」という状況を繰り返す場合、もはやヒーターではなくあなたに異常があると言えます。
十中八九間違いありません。
お祓い・新興宗教・自己啓発セミナー・ホットヨガ・フルーツ青汁、等々…思いつく限りの対処法を試してみましょう。
それでもダメな場合はご連絡下さい。とても効果のある壺をお分けしましょう。本当ならば400万円はするのですが…あなたと私の仲です、特別に100万円で良いですよ。
もしくは宇宙の波動を感じられるセミナーに参加してみますか?大丈夫、私も含めてみんな優しい人ばかりですよ。
追記:
今回の記事は問い合わせからいただいたメールにお答えする形で綴らせていただきました。
「できれば面白い内容で」との事でしたので、精一杯頑張ったのですが…大丈夫でしょうか。もしご不満でしたらさらにふざけた内容に変更致します。
「あの製品が気になる」「アクアリウムで変な疑問がある」といった方はお気軽にご連絡下さい。可能な限り記事にしてお答えさせていただきます。
灰犬様
いつも楽しく拝読させていただいております。
今回のリクエスト記事も読ませていただき恐縮ながら私も灰犬様の知恵をご教授頂きたくメッセージを書かせていただきました。
私の水槽では現在外部フィルターとプロテインスキマーと底面ろ過を併用しています。
(元々は底面+スキマーだったのですが途中でろ過能力不足となりこの状態に、、、)
現在ニッソーの底面をマスターパル(外掛け)に連結して使っておるのですが、途中で水槽のサイズアップをしたため、恐らく能力不足になっております。なので可能であればろ過パワーをアップさせたいのですが、どの方法で流量UPをするのが良さそうでしょうか?
その他水槽状況
・テトラRG40(容量34L)
・テトラユーロパワーフィルター60
・海道河童大
・キンチャクガニ2匹
・クリーナーシュリンプ1匹
・マガキガイ1匹
・ネオンゴビー1匹
・ゴールデンエンゼル1匹
・LSP、ソフトのフラグ10個くらい
・海ブドウモサモサ
灰犬様のお知恵を拝借できないでしょうか?
どうぞよろしくお願いします。
さかた様
初めまして、コメントありがとうございます。
私のような変人アクアリストに丁寧なお言葉、むしろこちらのほうがが恐縮でございます。
詳しい状況説明もありがとうございます。おおお、けっこう目一杯ですな。
実際に水槽を見ていないので難しいところですし、ガチで考えると恐ろしく長くなるので・・・あくまでも参考程度としてお聞き流し下さい。
「ろ過パワーアップ」「どの方法で流量UP~」との事ですので、
『生物ろ過』を『底面フィルターとマスターパルのシステムをどうにかして強化』という事で良いのでしょうか。
もし見当違いのことを言ってしまっていたら、お手数おかけしますがまたご連絡下さい。
「私だったら、こうするかな」といった内容で、続くコメントでお返事させていただきます。
『どの方法で流量UPをするのが~』との事ですが、マスターパルを何か別のモノに交換する事を検討しているのでしょうか。
この水槽サイズで「外部+海道河童大+外掛け」は水流がだいぶ強くなりそうですが、もしそれでも問題ないのであれば単純に他の外掛けフィルターに変えるのもありだと思います。
ただ、あくまでも私の考えとしては『底面フィルターの流水量を増やす』は生物ろ過能力アップにあまりつながりません。(フィルター内がよどむほど弱いならば別ですが…)
生物ろ過能力をアップさせるには「バクテリアが定着できる表面積を増やす」の一択ですので、『総水量・ろ材・ライブロック・底砂(底面ろ過の場合)』などを増やすのが良いかと思います。
マスターパルの濾過槽はどのように使用していますか?
底面フィルター直結であれば通常の「使い捨てフィルター」よりも、濾過槽に小型ろ材(リング・ボール)をネット等に入れて詰め込めばだいぶ表面積が稼げます。もし大きな外部フィルターに変更すれば、さらにろ材を入れる面積が増えます。
ご説明いただいた「生き物の量」と「設置している設備」から考えると、生物ろ過能力は十分確保できる気がするのですが・・・足りないと感じる理由があるのであれば、やはりどうにかしたいですよね。
コメント欄であれこれ書くには限界があり、何がなにやらキテレツなお返事になってしまい申し訳ないです・・・。
もし何か至らない部分があれば、またお気軽にご連絡下さい。
私ももう少しアレコレ考えてみます。
わざわざ記事にしてもらってすいません( ˊᵕˋ ; )とても参考になりました。
そして、ご指摘のとおり、やらかしてました。単体ヒーターだったみたいです( ;∀;)
これからも、わからない事があるときはまた質問するかもしれませんが、よろしくお願いします (*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
ご期待に添えるか心配でしたが、お役に立てたならばなによりです。
そして単体型ヒーターでしたか…(笑)
なにはともあれ大事に至らずに済んで良かったです。
また何かあればお気軽にどうぞ。真面目な質問から不真面目な質問まで、いつでも受け付けております。
灰犬様
ご返信ありがとうございます!
ポンコツな質問をしてしまい申し訳ございません。
はい、仰る通りマスターパルの交換を検討しておりました。水が流れる部分に青々としたコケがベットリで、しかも他フィルターで濾過をしているので、「こいつは最早なんの仕事もしていないのでは??」という感じで今や設置していることに疑問が湧いている状態です。
ただ設置しているなら少しでも濾過に役立てたいと思い、外掛けを変えるのが良いのか?エアー吐出量3,000位のポンプに繋いでエアーリフト式にした方が良いのか?能力UP手段に悩んでおりました。
ですが灰犬様のご意見ですと、ここを多少変えてもあまりろ過能力に差はなさそうですよね。。。いっそのことパイプ抜き取って埋めてしまって空いたスペースを別に有効活用した方が良いでしょうか?
余談ですが、主役のゴールデンエンゼルがスーパーシャイボーイ?ガール?で、食べさせるためにかなりの餌を投下しており、過剰ろ過大歓迎です。
いえいえ、ポンコツだなんてとんでもない。
水槽遊びは奥が深すぎて言葉で説明するのは難しいですものねぇ。
なるほどなるほど、状況がだんだんわかってきました。
底面は「物理ろ過」は苦手ですが「生物ろ過」に関しては優秀、しかも水槽セッティング後に入れることはできないので、今現在底面フィルターが入っているのならば埋めてしまうのはもったいないと思います。
ご提案の方法2種類であれば…
・『外掛けを大型に変更』
→濾過槽を大きくして有効活用できる(ろ材を入れて生物ろ過能力アップ・吸着剤を入れて藻類の増殖を抑える)
・『エアーポンプでエアリフトに変更』
→水中の酸素量が増えるのでバクテリアが活性化し生物ろ過能力アップ。生き物にも嬉しい。気泡による塩ダレや汚れが増えるのが難点。
…といった感じかと思います。私は「豊富な酸素は正義!」派ですので、エアーリフトのほうをオススメします。
底砂の粗さと厚さがどの程度なのかにもよりますが、エサを大量投下しているのであればなおさら底面ろ過は活かしておいたほうが良いと思います。
ゴールデンエンゼルですか!いいですねぇ。私もたまにゃそういう正統派な魚を飼ってみたいものです…(笑)
灰犬様
アドバイスありがとうございます!
エアーリフトで試してみます!!
そして灰犬様の水槽のようにワラワラ微生物発生を目指します!!
ありがとうございました
こちらこそありがとうございました。
水槽遊びを楽しんでいる方とのお話はとても励みになります。
「改善できた」「むしろダメだった」「面白い結果が出た」等々あれば、またコメント下さい。
これからも共にアレコレ悩みながら楽しんでいきましょうっ。