海水水槽に手を出すと…初心者がかかりやすい6つの病気
季節はもう秋。真夏の高温から水槽を守りきったマリンアクアリストの皆様、お疲れ様でした。
完全空調の部屋で高価な設備を使い、優雅に水槽管理をしているセレブなアクアリストの方はごめんなさい。「人工海水を凍らせておいて、水温上昇時には水槽に浮かべて対処するぜ!」・・・といった異端アクアリスト大歓迎、変人の味方、水槽抱えて三輪車です。
今回はちょっと気晴らしネタという事で「本格的に海水水槽に手を出し始めたビギナーがかかりやすい病気」なんてタイトルで、馬鹿な戯言でも垂れ流してみようかと。
記事タイトルから「海水中に潜むバクテリアによる感染症」とか「有害な生物による深刻な被害」などを期待して訪問してきた方、ココはそんな崇高なアクアリウムブログではありません。コアな変人向けのくだらないワンダーワールドです。
海水経験の長い方は「あー、そんな事もあったあった」と薄笑いしながら、ビギナー真っ最中の方は「今そんな感じなんだけど、オレ病気!?」と憤りを感じながら。
そんな感じでお楽しみいただければ幸いです。
初期にかかる病
初めて海水水槽を立ち上げたばかりの時期。
売られている海水の素を見ては「なんで塩がこんなに高いのよ!」となり、ライブロックを見ては「なんでただの石がこんなに高いよの!」となり…まだ正常な金銭感覚を維持できているマトモな時期にも病は潜んでいます。
やたらバクテリア入れる病
ショップに行けばそれはもう多くのバクテリアが販売されています。固形もありますが、ボトルに入った液体で「立ち上げ時に〇〇cc、水替えごとに〇〇cc」といったものが大半。
こんな感じのヤツですね。淡水・海水両用というタイプが多いですが、このように海水専用という商品も多くあります。
とにかく「水槽に良いとされている物」に片っ端から食いついてしまうビギナー期には「やたらとバクテリアを入れたがる」という病によくかかります。
継続的に販売が見込めるという性質から、ショップでも「入れたほうが良いですよ!」と推してきますし「水槽立ち上げにコレは必須ですから・・」と、バクテリア投入=常識というノリで迫ってくるのも病を蔓延させる要因かと。
たしかに立ち上げ時にこういったバクテリアを投入すればそれなりの効果が見込めますが、入れなくても立ち上げは十分に可能。そして立ち上げ後は適切なバクテリアがしっかり繁殖してしまえば、追加投入なども不要です。
考え方は人それぞれですので「まぁ入れたい人はどうぞ」という感じの商品なのですが、まだしっかり立ち上がりきっていない水槽に過剰投与すると弊害もありますので気を付けましょう。
水合わせ我慢できないよ病
アクアリウムでは根気の勝負が多々ありますが、生体の水合わせなどはその筆頭。買ってきたばかりの生き物を早死にさせないために、丁寧に時間をかけなければならない作業になります。
・・・が、しかし。
「・・・もう我慢できない!入れていい??入れるよっ!!」と歯止めの効かない若者のように、水温が合ったか合わないかぐらいで早々に挿入…じゃなかった、投入してしまうというのはビギナーにありがち。
経験を重ねると「入れるまでの過程」を楽しめるようになるのですが、やはり覚えたての頃は早く入れたくなりますよねぇ。
しかし少し袋を浮かべたくらいにして、早々に水槽へ解放!は危険です。しっかり水温・水質を合わせましょう。
さらに水合わせ中はエアレーションを入れてあげる事を忘れずに。コレがけっこう大事だったりします。
注)水合わせの方法に関しては人それぞれ異なります。「絶対この方法じゃないとダメ!他の人の言っている事は間違い!」と、自分の考え絶対マンが声高に主張していたりするで注意しましょう。
入れすぎ中毒
「もう無理、そんなに入れたら…」となっているのにガンガン入れまくってしまう。そんな勢い盛んな若者のような・・・・え、しつこいですか?失礼致しました。みんなそういうネタ大好きかと思って・・・ぐすん。
えー、ごほんごほん。「水槽のサイズ・設備・生体の種類」によって、投入可能な生き物の総量は変わってきます。
ところがアレもコレも魅力的に感じてしまい、どんどんいろんな種類の魚を入れてしまったり・・・ヤドカリもエビも貝も入れたくなってしまったり・・・。
気づけば水槽が華やかを通り越して、カオス状態になってしまう・・という症状です。
生体のストレスにもなりますので、できれば気持ち少なめの飼育量にしましょう。どうしても飼育したい場合、別に水槽を立ち上げましょう。
そうなってくると病は「どんどん水槽が増えていく病」に進行しています。こっちは手の施しようがない不治の病です。
ネット社会を原因とする病
遥か昔は書店に行ってもあまり文献もなく、失敗しながら実践で経験を積み上げていく必要があったマリンアクアリウムですが・・・。今は便利な世の中になってしまって「OK!Google!」とか「Hey!siri!」とか・・・恥ずかしい掛け声一発でなんでも教えてくれる時代になりました。
しかしネットは魔物が住む世界。万能にも見えますが、視野の狭い偏見に満ちた情報が多く溢れています。
そんな「ネット情報」に過剰に頼ってしまう事が原因で発症する病もあります。
あいつもこいつもカーリーに見える病
ネット依存病の代表がこの病です。
海水水槽に手を出し、いろいろ調べていると「カーリーはヤバいよ」といった情報がどんどん入ってきます。
Yahoo知〇袋でも「これカーリーですか!?」という質問は多く見られますが、あそこは「中途半端な知識を持った人間が上級者ぶって悦に入る」という自慰スペースですから。
水槽内に発生するイソギンチャク=「全てカーリー」
謎のひらべったい生物=「全てヒラムシ」
そんなレベルでしか回答できないエセ上級アクアリストで溢れています。
大丈夫、カーリーはたしかに面倒な相手ですが、心配で眠れなくるほどの脅威ではありません。
長期間海水水槽をやっていれば普通に経験する事ですし、対処方法を知っていれば、それほど早期発見にこだわる必要もありません。
対処薬は多々種類がありますが、個人的にオススメはこちらのレッドシー製品。適度な粘性があり、ライブロック側面などでも駆除が容易です。
ちなみに「カーリー」は誤用から広まった呼称。正式な和名は「セイタカイソギンチャク」になります。
謎生物過敏症
ライブロックなどを投入すると「…誰?」っていう生物には嫌というほど出会えます。
しかしビギナーの頃は「水槽に悪影響を与える生物かもしれない!」とビビって過剰に反応してしまいがち。なにせ海の生き物はルックスがヤバいのが多いですから(笑)
たしかに環境が合えば爆裂に繁殖してこまっちんぐな生物もいますが「多様な生物がいるのが当たり前」の海という世界を水槽内に再現するのがマリンアクアリウムの醍醐味でもあります。
せっかくなのでここで「ビギナー期の謎生物」をいくつかご紹介します。すでにこんな生物はご存知というベテランは、水替えでもしていて下さい。
「穴から出ているイカゲソのような触手」
これは大きく育てた生体なので、かなりデカく長く出ていますが・・・ちょろっと2本だけ短く出ていたりします。お名前はクモヒトデ。全く害はありません。むしろ掃除屋です。
水槽環境によっては繁殖も可能。ウチの水槽は増えすぎて合計100匹以上いるかと…。手渡しで餌を与える事もできるので、慣れると可愛いヤツですよ。
参考記事⇒クモヒトデ【飼育方法!?】と【魅力】
「貼りついているダンゴムシ」
コイツはヒザラガイの一種。種類によって見た目に違いがあります。こんなルックスですが貝の仲間です。
ライブロックやガラス面の掃除をしてくれます。削り取る力は強く、石灰藻も食べます。
参考記事⇒ヒザラガイ【飼育方法】
「半透明で中心に茶色っぽい部分があるヘンなヤツ」
これがよく「ヒラムシ」と答えられている生物です。コイツの名は「クラゲムシ」。夜間になると細長い糸状のものを水中に漂わせ、微生物を絡めとって食べます。
環境が適合していると爆発的に増えるうえ、小さなエビ類などにこの糸が絡みついたりもします。残念ですが駆除対処と考えたほうが安心でしょう。
参考記事⇒【水槽の謎生物】水中に漂う美しい羽・・・のような変な糸
「穴から出ている大量の糸」
細長い複数の糸が、ライブロックの穴などから出ている事があります。これはイトヒキゴカイ(ミズヒキゴカイ)。見た目はヤバいですが、水槽環境としては有益な生物です。
大きいヤツが底砂の上をウネウネと動いていたりするとちょっと駆除したくなりますが・・・小さいサイズで問題の無い位置に住んでいる場合はそのままそっとしておいてあげましょう。
ライブロックは赤が正義!病
ベテランの方、水替えは終わりましたかー。こっちは次に行きますよー。
謎生物の一例で想定外に文字数を食ってしまいました。そっち系のネタになると止まらなくなるんですよね…。
最後はコレ。海水水槽の最たる特徴の1つ、ライブロックです。
こちらはキュアリング中。
ただの岩のクセにバカみたいな値段をしているライブロック。ビギナーのうちはアレコレと悩み・・・少しでも良い物を欲しくなった末に「Sグレード」などとされている、高値で真っ赤なヤツに手を出してしまいがち。
いえ、良いんです。状態の良いライブロックを購入するというのは非常に好ましい事なんです。
しかしネット情報に振り回されすぎてしまい・・・
「赤くないライブロック=悪いライブロック」
と判断してしまうのは早計です。
上写真のライブロックは「ベースロック」として販売されている低グレード商品(3kgで約\2000)の物ですが、ライブロックを入れるの目的の一つである「濾過」という点では全く劣っていません。むしろ石灰藻に覆われすぎると表面の細かい穴が塞がれてしまい、濾過能力が低下する場合すらあります。
このような、ほぼ石灰藻のついていないライブロックでも、水槽環境が整っていれば数カ月ほどで・・・
このくらいまで赤くなります。
ライブロックの色はそのライブロックがどのような状態であったかを知るための目安です。しっかり問題の無い環境でストックされている物であれば石灰藻は後からどうにでも増やせます。
大事なのは形状と、多孔質であるかという点。
あくまでも石灰藻は「水槽環境を計るバロメータ」として考えたほうが、地球にもお財布にも優しいです。
さいごに・・・
本当はもっと多数の病があるのですが、あまりにも長くなりそうなのでこのくらいで。。。
どんな趣味にしても、初めての事が多くてアレコレ悩んでいる時期ってのは楽しいですよね。後から振り返ってみると自分でも恥ずかしくなるような考え方だったり。
ネットでたくさん知識を仕入れて上級者を目指すのはとても良い傾向なのですが、「知っている」と「理解している」は違います。
頭でっかちのアクアリストではなく、しっかりと経験に根付いたベテランを目指したいものですな。
私はもう、途中からヘンな横道にそれてしまったので・・・「無駄に経験を積んだクセに、素人みたいなバカな遊びばかりしているアクアリスト」を目指して邁進してまいります…。