【活ブラインシュリンプは孵化が面倒?】餌付けが難しい魚の救世主ですよ!

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プランクトンフィーダーと呼ばれる「微生物を主食とする生き物」は数多くいますが、飼育下での餌付けの難易度はさまざま。それはもうあっさりと粒状の人工餌を食べてくれるものもいますが、基本的にこの手の食性は餌付けが困難な場合が多くなります。

水槽内にエサとなる微生物は繁殖しておらず、だからといって人工餌も食べず、冷凍エサも食べてくれない…となればコレ、ありとあらゆる魚(と甲殻類)が好むと言っても過言ではない『活ブラインシュリンプ』の出番です。

孵化させるために一手間がかかりますが、それを補って余りある効果を発揮してくれる救世主ですよ。

ブラインシュリンプの栄養価

まずは気になる「ブラインシュリンプって栄養価的にどうなの?」といった点から。ちょっぴり専門的な内容を含みます。

ブラインシュリンプというと白くてピコピコしている姿が思い浮かびますが、孵化直後のブラインシュリンプはオレンジ色。これはヨーサックと呼ばれる栄養の詰まった袋を持って生まれるためで、このヨーサックが非常に栄養価が高い成分となります。

しかし生まれたブラインシュリンプは孵化から約24時間ほどでヨーサックを使い切ってしまい、白っぽく変化。この状態になったブラインシュリンプに特別な栄養価は無く、単純に「新鮮な動物性タンパク質のエサ」に変わります。

活ブランシュリンプの栄養の真価は「孵化直後のオレンジ色」にアリ、というわけです。

もちろん孵化して時間が経過し、白くなった活ブラインシュリンプは無価値というわけではありません。人工餌と違い、動きのある活きたエサは多くの魚類で食いつきが違います。ヨーサックという特別な栄養を持たないというだけで、エサとしては有効です。

ブラインシュリンプは「魚を太らせる」という目的では優れたエサとなり、メダカを使用した実験ではブラインシュリンプで育てたほうが大きく育つ…という実験結果が出ています。実際、私の飼育環境下でも、活ブラインシュリンプで飼育したスポッテッドマンダリンは、あっという間にぶくぶく太っていきました。そりゃもうハムのように。

ー栄養価に関する注意点ー

ブラインシュリンプは塩水湖の生物であり、海水生物ではありません。そのため、DHAやEPAといった高度不飽和脂肪酸をほとんど含んでいません。この高度不飽和脂肪酸は海水生物には必須の栄養素になるため、他の方法で補う必要があります。

ブラインシュリンプのみで飼育する場合はご注意ください。

孵化方法

はるか昔「シーモンキー」という知育玩具があったのをご存知ですか?「1,2,3でシーモンキー♪でしょ?知ってる知ってる!!」となった方は私と同年代です(笑)

容器に粉を2つ入れるだけでピコピコした生き物が生まれる、という驚きの商品でした。

アレがブラインシュリンプ(に近い種)となります。実はシーの生き物でもモンキーでもなかったんですね。くそう騙されたっ!

水三輪的・無駄な豆知識
『シーモンキー』


商品説明では1剤が「飼育水を作る粉」、2剤が「シーモンキーの卵」と表示されていますが…実は1剤に乾燥卵が含まれており、2剤は「幼生を見やすくするための着色剤」だったそうです。くそう、またもや騙された。

独自の品種改良を施されており、アクアリウムの生き餌として孵化させるブラインシュリンプよりも丈夫で育ちやすくなっているとの事。

どうしてきな粉みたいな粉末を入れただけで生き物が湧くの?と疑問に思いますが…

自然環境下のブラインシュリンプは環境が悪くなると長期間の乾燥にも耐えられる「休眠卵(耐久卵)」を生みます。この卵は非常に長い期間そのままの状態を維持し、環境が整うと孵化。この乾燥卵がアクアリウムの孵化用エサとして販売されているものになります。

孵化の方法自体は簡単で

  1. 適切な塩分濃度の水を作る
  2. ヒーター等で水温を維持する。理想は28℃だが一般的なプリセットヒーター(26℃)でも孵化は可能
  3. 卵を入れる
  4. エアレーションを強めにかける
  5. 約24時間後にオギャー!

…となります。飼育水槽内にペットボトル等を入れて孵化させる場合、ヒーターは不要です。

一般的に市販されているブラインシュリンプエッグは2種類。

コレ以外のメーカーからも販売されていますが、現実的にはこの2択。私は両方長期使用していますが孵化率の差は感じません。ただし個人的にオススメはテトラです。

ニチドウのほうが量が多くてお得に感じますが、ブラインシュリンプエッグは開封後すると徐々に孵化率が落ちていきます。使用量とペースによっては非効率的になる場合も。

「え?どちらも20で同じじゃないの?」と思いがちですが、テトラは20[cc]でニチドウは20[g]、紛らわしい事に単位が違うんです。ニチドウはテトラの3倍くらい入っています(笑)

余談ですがコレもまだ売っていました。

孵化からエサの注意点

乾燥卵はまず底に沈み、幼生が孵化するとその殻は浮いてきます。この「孵化後の殻」は水中で分解されないため、エサとして与える際は水槽に入れないようにしなければなりません。

ごくまれに「飼育水槽に直接乾燥卵を入れて孵化させちゃダメなの?」といった相談がありますが、論外です。そして一般的な飼育水とは水温も塩分濃度も違うので、孵化させる事はできません。

追記)
…と言ったところで「でも…」とか「だって…」など、人の言うことを聞かない人は多くいますので、実験しました。

マネしちゃダメ!!変人実験!

「飼育水槽に直接乾燥卵を投入」ですが・・・実際に自分でやりもしないクセに知識だけで人を否定する…という行為は私のポリシーに反するので、実験してみました。

水温は26℃、比重は1.023。エアレーションは一般的な飼育環境の状態です。

結論から言えば、ものすごく孵化率が悪いものの孵化しました。ただし、投入した卵の5%にも満たない孵化率です。そして孵化しない卵は全て「ただのゴミ」となります。

「飼育水槽に入れるだけで楽ちん」と言えるような効果は無く、デメリットが大きすぎます。しっかりと正しい方法で孵化させて与えましょう。

孵化させる方法はそれぞれあります。ペットボトルを使った簡易孵化機を自作する方も多いですし、専用の孵化機も販売されています。

これは孵化後の殻も分離でき、とても簡単に孵化率も高くブラインシュリンプを孵化させる事ができます。

一般的な量ならこの商品がオススメなのですが、私は毎日大量にブラインシュリンプを消費するので・・・デカい容器で孵化させています。

孵化機・・というか箱

ブラインシュリンプ湧かし機

ウチはこれです。食品保存用ストッカーを利用しています。水量は約10リットル。

以前は採取用の蛇口を装備したり、ヒーターを内臓して攪拌機能を付けてみたり・・と、凝りに凝った大型の孵化機を自作していたのですが、長いことやってるうちに「ヒーター入れてエアさえかけてりゃ、めっちゃ涌く」という結論に至り、こういう簡単な箱になりました(笑)

ブラインシュリンプ集め中

エアを止め、ライトで集めてスポイトで採集します。毎日毎日、容器にびっしりと500mlぶんのブラインシュリンプを消費しています。採集するのも時間がかかりますが、もう慣れました。

もし同様の形で孵化機を作ろう…という方がおりましたら、注意点は2つ。

箱型の場合、強めのエアレーションを左右に配置しないと全体的に攪拌できず、卵溜まりができてしまいます。

写真では26℃の小型プリセットヒーターを使用していますが、孵化に適切な水温は28℃とされています。ご注意を。

与え方の工夫

活ブラインシュリンプを与える際、そのまま入れるとぶわーっと広がり…濾過装置の吸水口から吸い込まれて終了~となりますので、通常の濾過方式の場合は給餌の際に停止させる必要があります。ファンやインペラーを使用した水流装置も巻き込まれ続けていると死んでしまうので、できれば停止させましょう。

ブラインシュリンプは正の走光性を持っているため、水の流れが無くなると水槽の上など光に集まってきます。

泳いで食べてくれる生き物ならばそれで問題ないのですが「底面で食べる生き物」には工夫が必要になってきます。

これは私の飼育環境の一例ですが・・・

ブラインシュリンプ

スポッテッドマンダリンには水流を停止させて明かりを消し、横からライトで一箇所に集めて与えています。すぐに覚えて、準備の段階でライト前にスタンバイしてくれるようになりました。

ヤリテングは底面にいるもの以外は食べてくれないので、明かりはつけたままスポイトで個別に与えます。

こちらもすぐに覚えてスポイトを追いかけてくれるのですが、食べるのが下手くそなので大半が舞い上がってしまい、無駄がでます。

ロスを避けるため、ヤリテングの水槽にはハタタテハゼを入れています。ハタタテハゼは水槽中域で餌を食べるので、舞い上がったぶんをしっかり処理してくれています。

残りブラインに注意

ブラインシュリンプは飼育水では長くは生きられません。食べ残したぶんは死骸となって水を汚す原因になりますので、できるだけ全てを食べきってもらえるような工夫が必要です。

みんな大好き活ブラインシュリンプ

孵化から給餌まで、それなりに手間のかかる活ブラインシュリンプですが・・その効果は絶大。

とにかくさまざまな生き物が好んで食べます。魚類はもちろんのこと「おまえも食うの!?」という生き物まで、ガツガツ食べます。

ヤドカリも小さなハサミでかきこんで食べようとしますし、フシウデサンゴモエビなどのエビ類も集まってきてムシャムシャ食べています。クモヒトデも、その足を必死に動かして捕らえていきます。

人から聞いた話ですが、なにやらケヤリもブラインシュリンプを捕食するそうで。たしかに活ブラインシュリンプを毎日入れている水槽ではケヤリが元気で、いつの間にか小さなケヤリが増えていったりしています。

栄養価の部分で触れた「高度不飽和脂肪酸の欠乏」、私の飼育環境ではブラインシュリンプのみでも元気に長生きしていますが、気になる方はオヤツ感覚で与えるようにしましょう。

孵化が面倒で敬遠されがちな活ブラインシュリンプですが、未体験の方はぜひ1度試してみて下さい。冷凍ブラインシュリンプとは違った食いつき感を体験できますよ。


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